豆腐屋的脱構築


◇新年明けましておめでとうございます。
 といってももう七日で、明日はもう若草山
 の山焼きで、このまま雪がさほど降らなければ、
 綺麗に山肌を炎が走ることでしょう。
 今年も円盤が責めてきてウィル・スミスが
 宇宙人をひきずったまま砂漠を横断することとか
 ありませんように。



◇年末年始に買った本


*『豹變』 塚本邦雄 花曜社 (函無し)
*『70年代カルトTV図鑑』 岩佐陽一 ネスコ
*『快僧のざらし山上たつひこ選集14巻』 双葉社
*『エンパラ』 大沢在昌対談集 光文社
*『日本と世界の歴史22巻・第二次世界大戦』 学研
*『現代俳句の精鋭・I・アンソロジー100句』
  石毛喜裕ほか 1986年版 牧羊社
*『笑う長嶋』 夏目房之介 太田出版
*『現代日本文學大系66・河上徹太郎ほか』 筑摩書房
*同上『84・花田清輝ほか』
*同上『89・深澤七郎ほか』
*「現代思想/特集/スピヴァク」 1999/7月号 青土社
*「月刊サーカス」 2004/9月号 KKベストセラーズ


 『豹變』は函無しで1000円。年末恒例の
近鉄百貨店生駒店の6F催事の古本市で。
全集にも短歌研究の文庫にもはいってるから読んでいる
はずなのだが、大きな活字で読むとやはり記憶に新しく残る
歌があって、印刷というか歌の形態というかのものの
不思議なことよ。



『豹變』塚本邦雄より


桐の花とほきむらさき露臺より聲高(こわだか)に硝子屋を呼びとめて



ひとりむすめあらばいまごろそむかれゐむころかくらぐらと冬の赤富士


 など。「こころざし千差万別」という歌は一字違う
だけの全く同じ歌が二首はいっていて、全集でもそのままなのだが
これは、はて?
 「70年代−」とか三冊は年末仕事の疲労感が激しくてつい
ふらふらと買ってしまった本で、それは「レインボーマン
を50頁くらい使って紹介したりとかそういう本。
 みのり書房の「OUT」が「怪傑ズバット」をさんざん
ほめあげた文章をのせて、気になった読者が見ようとしたら、
発売日が最終話だったというようなナチュラルなひねりが
もっと欲しいところ。山上たつひこも朦朧とした意識で
買ってしまった本で、別に「さだまさしも「檸檬」という
曲の中でいっておる」とかいうセリフに時代を感じたとか
そういうわけではありません。
 大沢在昌のはエンターテイメントというか「このミス」系
の作家達への95年頃のインタビュー集。船戸与一の「最高の
叙情(原文のまま)というのはアジテーションだと思う」とか、
まあそれなりに読めるところも・・・あんまりないかな。
10年前だし。
 年末にやってたNHKスペシャルのゼロ戦に関するドキュ
メンタリーを見て、太平洋戦争の経過とかを確認したくて
学研のシリーズものを一冊。テレビではゼロ戦の設計者とか、
当時ゼロ戦と空中戦をした元アメリカ兵とかがばんばん
出てくるのに少し驚いた。死んだ人はたくさんいるが
生き残った人も少なくないということなのか。
 番組はおもしろかったですよ。
 これに続いて沖縄戦に関するドキュメントもやってた
のだが12月31日にこういうのをやるというのもなあ。
 「現代俳句の精鋭」は昔持ってて、たぶん捨ててしまった
一冊で、今でもウエブで検索するとあがってくる上島顕司と
いう俳人の若いときの句が載っている。このひとの、


つめたくて後ろ振り向く紅葉かな  顕司


という句が私は好きだったのだが、いまも作句しているか
どうかはわからない。


「薄氷」 上島顕司 100句 より


夕桜噴水重く上がりけり


滝壺の淋しさに滝落ちつづく


星一つ森がはき出す涼夜かな


四五冊の本二三日夏の月


雪吊りのあたり明るく暮れにけり



 などで、今読むとほかの句には若さというより感性の
おさなさなどをより感じるのだけれど、その後の句も
みてみたいものだ。
 『笑う−』はまだ全く開かず。
 去年の末から仕事もほかのことも落ち着いたので、
こういうときでなければ読めない本を、といくつか
筑摩の全集を買う。読んだからって何がどうとなるわけ
でもないが、次に別の本を読んだときに、あああのことが
ここに書いてある、といった面白さは常にあると思う。
 「現代思想」は特集によってとても読めない文章が
並んでるときもあるがこのスピヴァクの特集は結構
興味深く読んでいる。雑誌は9/11の事件の前だから、
帝国主義やらその他の記述がああ2000年の前なのね、
と思わせるけれども。こんな雑誌を読むのは少なくとも
私の場合は「100%知的虚栄心ね」と言われてもしょうがないのだが、
それでもこんな文章わかるかボケ的な字の羅列の中から、
ファナティックな「熱中」が見えてくるときは、
やはりおもしろいと思ってしまう。
 「肯定的脱構築」などという六文字にもそういう「熱中」
あるいは言葉なり概念なりを「選択」することの、
テンションというかがやはりあるような。
 この号では長原豊の文章にひさしぶりにそういう感覚を
味わった。うちに三冊しかない「批評空間」のII期20号を開くと、
宇野弘蔵についてこれまたこの長原豊が書いてる!
 ということでミクシイで「長原豊」コミュを探して、
なかったらあとで作ろうと考えたりする。
 1952年生まれだから藤原龍一郎さんと同じ年かな。
 「日本経済史・比較農民論」とあるけども、グーグルでは
翻訳作品であがってくるのが多いような。
 「サーカス」はこういういかにも! サラリーマン向けな
雑誌だとは知らなかったのでふらふらとブックオフで購入。
 サラリーマンと一口にいうけど日本にはほんとに仕事が
出来ないけど会社の方針で「解雇」というのが発生しないため
に年収一千万でその会社の警備員をやってるような人もいて、
金額や待遇の差はあれどまだまだそういう人は少なくない。
 ただそれは「悪」なのかというと私にはそうも思えないのだ。
 というようなことを考える人はこの世にただの一人もいない
かのごとくに編集された雑誌で、イジマカオルのピアノ線だか
釣り糸のテグスだかで緊縛ヌードを撮ってる5頁ほどが妙に
浮いていて変。
 イジマカオルというのはこういう仕事をしてる人。
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初写真集『眠る 松雪泰子
   緊急発売決定!

http://www.stardust.co.jp/rooms/matsuyuki/info/sleep/sleep.html

「本書は「ほんとうに眠っている女性を撮る」
というコンセプトで、
写真家・イジマカオルが撮影した
200点あまりのカラー写真で構成されています。」

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おもしろいですか?
おもしろいですか?
それ。
朝日出版社はよくわからんなあ。