彼らはフェリーに間に合った
◇最近読んだ古本
*「CDジャーナル」2002/4月号
*「recoreco」2003/3-4月号
*「SFが読みたい!」2004年版
カタログというのは何につけおもしろい。ブックガイド本というのは
いつのころからかちまたに山のようにあふれはじめたが、
それでも本一冊読むよりも気楽に眺められて楽しめるものは
少なくない。
「CDジャーナル」なんて買ったことなかったのだけれど、とりあえず
こういう出てるCDのなんでもかんでも(稲垣潤一やアリスの再発CD全て!)
の視聴コメントを載せているとはしらなんだ。
DVD関連の評も載っていて退屈といえば退屈だった
「エトワール」(2000年/仏)とか、
買って途中まで見たのをさっき最後まで見てみようとしたら、
箱だけあってビデオテープがどこかへいってしまった
低予算っぽい旧ソ連SF映画「不思議惑星キン・ザ・ザ」(1986年)の
評とかきちんと載ってるの。
それでも見てない映画や聞いてないCDの方が人間多いのはだいたい当たり前
なので、「プッシーキャッツ」(2001年米/カナダ)とかカール・ドライヤーの
映画とか見てみたいなと思わせる評が載っている。
(ちなみに今日の日記の題はドライヤーの映画のタイトルね)
昔「詩学」の投稿欄とかでその名を見てた記憶があるので
なんとなく懐かしい園子温の「自殺サークル」(2002年/日本)とかの暗めの
紹介の次のページが「暖かみのある音が魅力の”1ビットオーディオ”」とかいう
見出しなのもほほえましい。っていうかしょうがないよね。
「recoreco」は遠い昔に難波ジュンク堂で一度買った記憶があるけれど、
やっぱりちょっと路線が違う本の紹介が多いし、最近大阪まで行って本を買うなど
しなくなったので読むのはこれが二度目。
これを買って読みたくなったのは、
『未来は長く続く アルチュセール自伝』ルイ・アルチュセール
『ビッビ・ボッケンのふしぎ図書館』ヨースタイン・ゴルデルほか
『猥談』岩井志麻子対談集
岩井志麻子のは開巻いきなり野坂昭如に向けて、
岩井「感激いたしましたのが、野坂先生のマスターベーションへの目覚めが
自分と同じ登り棒だということでした。」
というのではじまるらしく、役に立ちそうにはないが興味はみたされそうな。
橋本努という人の「組織的な悪を読み解くための10冊」の
リードはかっこいいです。
「SFが読みたい!」は別にSFが読みたくない私にはあんまり意味がないかな
とは思ったし実際小川一水なんか全く読んでないから何は何なんですが、
16頁にわたる「2003年度SF関連ビデオ目録/リスト構成・添野知生」が
すごくおもしろかった。16字*8行のスペースでメジャーマイナーを
問わずSFっぽいビデオとかをすべて評してるんですがこれが的確!
かつ明瞭!たとえば「リターナー」に関しては「SFとしては絵も話も
充実しているが(正岡註:そうでもないとも思うけど)抗争劇のほうが
荒唐無稽でリアリティがなさすぎる。」とかね。「XMEN2」については
「分裂気味のプロットは何もけりがつかないまま「つづく」で幕切れ。また
二年待たされるのかと思うといささかうんざり」とかね。
エディマーフィー出演の「ブルート・ナッシュ」という「制作費一億ドル
(100億円?)の超大作ながら大コケした宇宙SFの珍品」とか、
「いい感じにくだらないSFコメディ」の「ゾルタン★星人」とか、
なんとなく見てみたいですね。
◇ミスタードーナッツで上野さち子『女性俳句の世界』読了。
41歳の細身綾子と29歳の沢木欣一の結婚時のエピソードは
初耳なのでなかなか素敵と思った。
でもそれぞれの女性俳人の人生を語りながら句を引用すると、
おのずから句は説明的なものが多くなっちゃうわけですけどもね。
そんななかで、
枯向日葵となり千手観音となる 三橋鷹女
紫の雲の上なる手鞠唄 杉田久女
なんかは完結性が強くて印象に残ります。
橋本多佳子を「男性主導型の世界における甘え方の俳人」
(小林恭二著『俳句という愉しみ』より)と語る岡井隆さんにも
こういう本を一冊書いてみてほしいものですな。