遊星民営化

◇どうも脱水が終わった洗濯物を干そうと手に持つと
ちょっとべちゃっとするなあ、と思ったら、
百円ライターが底の方に残っていて、例のはってあるシールが、
ぼろぼろに剥がれていた。
あーこれが溶けてたのかな。


辰巳泰子さんから歌集『セイレーン』をいただいた。
まだ完読してないが、かなり気合いのはいった綺麗な装幀。、
作品では、ちょっと前の過剰な字余りが後ろに抜けている感じがする。
先日の日記で三月書房に買いにいったのは、この歌集を探しに
いったのだった。辰巳さんから、おくりたいので住所を、といわれたが、
なんとなく買っておきたかったので、その返事を出す前に手にしたかったのだった。


◇とはいうものの、翌日のびわ湖ホールのイベントのチケットを、
(空席があったとしての話だが)
ぴあとかへ行って買い求めることが出来なくなってしまった。
わりと予定して行動することが年取っても出来ないんだなあ。
それでも当日券でもあればなあ、と土曜日の昼から大津まで出かけてみた。
はじめて行ったびわ湖ホールは、京都から意外と近い。
やっぱり関西って便利だよね。
ところが斉藤斎藤もおすすめというチェルフィッチュの新作も柳澤くんが見たがっていた
伊藤キムのも
当日は券がなかったので、びわ湖を見ながら、秋に出る「sai」という同人誌
に出すことにする歌を考えたりしていた。
いやロケーションがいいホールですね、ここって。
遠くにヨット。
近くには、釣り人。
波の音はひさしぶりに聞く。
鎌倉の海が見えていた、数年前の「未定」の会の宿。
須磨の病院に入院していた、震災前の永田耕衣を、奈良の南上さんと
お見舞いにいったときに見た、冬の砂浜と海などを思う。
その、須磨の海辺を、若い男の乗るサンドバギーが走っていた。


*冬の浜サンドバギーは夢なのか それとも土星の衛星なのか


というのは、その須磨の光景を思って昔作った歌。


◇ホールのロビーには資料コーナーみたいなのがあって、
ビデオやDVDなども鑑賞出来る。
そこで見たのがピナ・バウシュの『嘆きの皇太后』で、
最初舞台の録画かと思ったら、完全にフィルム作品で、あとで家に帰ってネット
で検索してみると、古い作品だが結構あちこちの鑑賞会などでとりあげられてる
ものだった模様。
ちなみに途中で少し寝ました(笑)。
ネットの記事によると900時間ほど撮ったフィルムを一時間半ほどに
編集したものらしい。
ストーリーらしいものは感じ取れないけれど、完全な断片感もなくて、
ノスタルジックで夢幻的な光景が連なる。
そのまま帰ろうかとも思ったけれど、「ダンスピクニック」というのを
ホールの空間でそのまま演るらしいので、それだけ見て帰ることにする。
もらった一枚物の内容案内チラシみたいなのには、
エメスズキ、ポポル・ヴフ、今貂子+倚羅座と書いてあるけど、
あんまり私には意味がない。
それぞれ20分ほど。
なかではポポル・ヴフという中公文庫版のタイトルを思い出しちゃうグループが、
こちらの先入観のなかにあるダンスのイメージにあっていた、という点で、
私にはおもしろかった。管楽器のソロの生演奏と、女性三人のダンスで、
一番前で躍ってた髪の短い子がとてもよかった。
最初のエメスズキという女性のソロのとき、
ホールの向こうの広い窓の向こうの湖面を、観光船の「ミシガン」が
右から左へゆっくりとすべっていくのが見えたのだが、
その偶然のかさなり具合はなんとなくよかった。
そのあと、近場を散策すると、大津のパルコがあった。
はいっている本屋の詩歌のコーナーに行くと、深夜叢書社の新句集があって、
高澤晶子のものがおいてあったりなんかする。
三月書房でもみなかったけどね、こんな本。
そうこうしてると、暗くなった。
港の方へ向かうと、地元の祭りらしいのをやっていて、
ちょっと待ってると、花火がもうすぐ上がる、とのこと。
大津花火大会はその二日後だったのだけど、
(これを書いてる今は終了済み)
しばらく待ってるとなんか低いところでパパパン、ボボボンと
今年はじめての花火を見た。


◇買った現代短歌文庫の『山田富士朗歌集』。
1990年に出た『アビー・ロードを夢見て』を私は買い逃して、
読みのがしていたのであった。
初読というわけだが、思ったよりも退屈で、誰かの引用で読んでいた
作品でおぼえてるものがよく思えて、あとは印象が薄い。
山田の短歌作品は、読む者に「優越感に似たもの」を与えるように
私には思える。そこは、単純に、妙だ。


◇買った本とかその他。


*ビデオ『ボ・ガンボス/宇宙サウンド』 1989年リリース 300円
*廉価クラシックCD「ベートーベン第九」 315円
*同じく「ガーシュインラヴェルドビュッシー」 315円
*CD「グルーヴィー&ブルー」アレマイユ・エシェテ 2300円+税
*『BLEACH』18巻 410円 ジャンプコミックス

昔「QJ」で特集をしていたどんとのバンドのビデオは、後年の精神世界(?)調の
ものではなくて、80年代バンドカラーの強いものだった。でも見たことないものは、
見ておきたいという気持ちが買わせたりするわけだ。
アレマイユ・エシェテは松井茂くんのミクシイのおともだちの某氏のレビュー、
「暗黒界の三波春夫」といったレビューを読んで、衝動通販買い。
湯浅学の紹介ポップがはりつけてあって、こういうの。


しばし絶句、のち悶絶。
音楽ブラックホールの蓋を開けたか。死人から精子卵子まで躍らせる明朗快活な
地獄のグルーヴ。地に呪われたる者もミニマリストJAGATARA人も民謡愛好家も
モンド野郎も永田町の豚さえもが身をよじり随喜の鼻汁たらす。おそるべしエチ
オピア。ワールドミュージッカーよりもむしろ前途ある少年少女たちに、ぜひ。



すいません、この文章のほうがCDよりもおもしろいです。
とはいえ、「すべての文化活動は政府の管理化にあった」(インナースリーブより)
アフリカの国の音楽状況を短い文章で書いてる解説も秀逸な一枚。
「日本ではない国」のことは、やはり、少なからず、遠い。