花よりもわずかに軽薄に


◇ということで「サンパン」を読み始める。
 「サンパン」は本当は舟扁に山を書く字の「サン」と「板」で、
 木の舟とかそういう意味らしい。
 発行所のウエブのページが今表示されないので、
 リンクはしないが、なにやら事情でEDI叢書等の出版を中止するそうなので、
 そのあたりとも関連するのかも。


◇さて、買ったのは第一期の1983年×4冊、1984年×4冊、
 第二期の1996年〜2000年の10冊のセット。
 簡単に説明するのは難しいのだが、書肆と読書を愛する人
 ための冊子といいましょうか。
 私は本は好きなのだけれど、「本」そのものには愛着や所有欲は
 あんまりないです。それでも薄くなってからの第二期のものに
 書かれた、昭和前期の出版物の話とかは充分におもしろく、
 ちょっと手短に紹介など。


◇第二期一号は、保昌正夫の「『手帖』のこと」(上)と
 発行人の松本八郎の「個人出版半可通史1/野田誠三と『三十日』」
 の二本の記事のみ。二号はその保昌の文の(下)と、
 同じく松本の「松本俊介と『雑記帳』」。
 今ウエブで検索したら、野田書房とかについてはこんなページが。


純粋造本
− 江川書房と野田書房 −↓


http://www.lib.meiji.ac.jp/openlib/issue/kiyou/zouhon/index.html


 「サンパン」誌の文章は上記のウエブの文よりくだけていて、
 はるかに読みやすくしかも含羞と情愛がそれなりにブレンドされていて、
 本好きであることの「やさしさ」をうかがわせる好文章になってます。
 『手帖』というのは、横光利一川端康成が係わった文芸誌で、
 「一人一頁」という単位で、それをどうしようと自由だ、という
 編集方針で作られたものらしい。
 それはそれでおもしろいけど結果はどうなるかというと、
 現在のあぶくのようなウエブのテキストみたいになるという、
 水上瀧太郎が指摘する当時の『手帖』掲載の一文で、
 あざやかに幕を引く保昌の文章はそれなりにさわやかである。
 松本八郎の「松本竣介と『雑記帳』」は画家の松本竣介
 発行した『雑記帳』という雑誌の話で、これはこの一文の脚注に書かれた
 執筆者の一部の名前を見ただけで私ですらもいささかこころが踊る。
 江戸川乱歩の「貼雑年譜」完全復刻はその著者のポピュラーさからか、
 かなりの人の話題になったが、この『雑記帳』も1977年に復刻されて
 いるらしく、知る人の人数の多寡に関わらず、そういうものは
 世に出し直されてゆくのだなあ、と感慨を深くする。


◇それでは今日は短いですがこの辺で。