ミックスダウン・チャイナタウン


◇三月書房に行って買った本&もらいもの


買ったもの
*「水声通信」2006/3月号特集 野村喜和夫 詩の未来にかける
* 同上 2006/10月号特集 宮川淳、三十年の後に
*「サンパン」第一期・第二期セット エディトリアルデザイン研究所


これもらえますか、といってもらったもの
*「WB」(wasedabungakuFreePaper)2006/11


 今日もマクド岡井隆全歌集を読んでいると、ある箇所で急激に
 『假泊港』という笹原常与の詩集が猛烈に読みたくなった。
 こんな本ね。↓
http://www.minatonohito.jp/books/b008.html


 ずっと三月書房の入って左の方の詩の棚においてあったが4800円も
 するのでほんとに読みたくなったら買おうと思っていたのだった。
 さて行ってみると・・・ない! ないじゃん! 
 ・・・・・まあ二年ほど前の話だからなあ。しかし限定200部なので
 もう版元にもないかも知れないなあ。と気落ちしながらそれでも
 なんか買う物はと選んでみた。「現代詩手帖」も12月号になっちゃってるし、
 別に短歌もいまはいいし・・・日和聡子片岡直子ったってなあ・・・。
 というわけで、近所ではあまり見ない「水声通信」のバックナンバーと、
 ビニールでパックしてあって750円とお買い得の「サンパン」の十数冊の
 セット。はじめて買います「サンパン」。
 あとカウンターに置いてあった、「WB」もはじめて見たので、
 もらってみる。今日のレジはかなりおじいちゃんになったなーって感じの
 宍戸恭一さんでした。


◇で、帰りにホリーズカフェでコーヒーを飲みながら「WB」を読み始める。
 巻頭は重松清坪内祐三の対談。「en-taxi」が十万部をめざしていたとは
 しらなんだ。リュックに入れて持ち運んでいた「en−taxi」の5号は、
 巻頭に福田和也磯崎新浅田彰竹生島へ行っての見聞記みたいなもので
 それで10万はなんぼなんでも無理でしょう。でもまあ、この対談でも
 出てる通り、「東京タワー」が売れましたからね。
 読み始めると、求人冊子みたいなこのでかくて薄めの冊子がわりと
 おもしろくって。
 執筆はそれぞれ短いながらも、へーほーと思うようなものが。
 青山南は「光文社古典新訳文庫」の話、少し痩せたんでは? と思う
 高原英理は塚本短歌と最近の新人歌人のネオゴシック系の短歌に言及。
 池田雄一は黒田英雄さんと奥さんの会話のような「マルチチュード」へ
 流れる対話編、生田武志は「あいりん小中学校」でのケースワーカー
 人が書いた本の紹介(『生まれたときから父親と飯場で生活し続け、
 入学すると「今日から酒もやめるし、たばこもやめる」と宣言する
 小3のこどもが登場する』:生田武志コラムより)。
 斉藤美奈子は、荷風について書きながら、有名になるほど無名になった
 「六甲下ろし」の歌詞の作者の佐藤忽之助が書いた島倉千代子でおなじみの
 「すみだ川」の歌詞へと流れる好文章。
 モブ・ノリオは氏名の中のナカグロよろしく、「こうるさいシティズン」
 のごとき情況への発言を。
 大杉重雄は怪作アニメ『おろしたてミュージカル 練馬大根ブラザース』を
 まじめに批評。
 上野昂志は、そういえばどこかで見て行こうかなと思っていた、
 大阪での大森一樹とかとのシネマテークの話。
 日本ではいろいろな事情で作られても公開されない映画が
 昨年で100本以上あったから、今年は200本ぐらいになってるだろう、とか。
 うわー、すごい数!
 そいでもって小説は一本だけ、穂村本の刊行で歌人やファンにはおなじみの
 ヒヨコ舎さんから本が出た、川上未映子のそれっぽい
 ((町田康+かなり昔の松福亭鶴瓶のステージのトーク
                  ×WEBの女性の日記の文体)
 小説が。
 これでただとは! おそれイルカのフリッパー!


◇ということで三月書房通信でもおなじみのガラガラのゼスト御池
 通過して、地下鉄に乗ってというか「猫」の「地下鉄に乗って」と
 いうかで帰ろうかと思ったがついふらふらと、ふたば書房へ。
 あ、でも。
 彷書月刊よりダヴィンチというタイプには、それなりの見栄えの
 する棚揃えで、これはやはり学生が多いからですかね。
 殊能将之さんも超おすすめのデイヴィッドスンをはじめ、
 国書刊行会の海外文学もそれなりにじゅーじつ。
 白水のダイベックもあるし。
 詩の棚も鳥類の『テレビ』をはじめ例のシリーズが三冊ともあり。
 1900円なのにこんな装幀とはねえ。
 榊原淳子がいかに現代詩バブリーの時代の申し子だったかって
 ことですかね。
 で、「現代詩手帖」の年鑑をさらにパラパラと。
 ああ、この水無田気流というひとはうまいこといいますね、
 最近の詩人をサッカーチームのポジションで評してるんですが。
 あと今年は私はぼーとしてましたから知りませんでしたが、
 確かに結構今年詩集いっぱい出てますね。
 いやいつもいっぱいは出てるんですが、
 それなりの「現代詩以降」みたいな世代の詩集も、
 旧世代のひとの詩集も。
 私が買ったのは松本圭二の「アストロノート」だけで
 それも買ったけど全く読んでないんですけど。
 うーんこれはもう、短歌書きながら詩を読むのはそろそろ
 無理かも知れないですなあ。
 というようなことを考えながら、帰宅。


◇岡井の全歌集は『臓器(オルガン)』を経て
 『E/T』『<テロリズム>以後の感想/草の雨』へ。
 『臓器(オルガン)』はやたら国内を移動することを契機にした
 歌が多くて、それはまあしょうがないんだけれども。
 なかで「キルギス−拉致された技師について」は緊迫感のある、
 深い余剰を残す一連。
 中央アジアに関しては、筑摩の黄色い大系の評論の巻に、
 色川大吉がブハラやサマルカンドを旅したことが少し
 書いてありましたが、それにしてもこの一連はいいですねえ。
 『E/T』の「15」の「パスティシュ」は、荻原・塚本・高野のそれ
 なのかしら?
 単行本で見るとあんなに金子光晴っぽかったのに、
 全集で読むとまったくそんなのはないですねえ。
 つづいて『<テロリズム−』の方へ。
 「三月十五日、杉浦明平さんの死を聞きつつ、しずかにうたふ挽歌」
 は、追悼の長歌がきちんと見開きにレイアウトされてます。
 これは!
 こ、これは!
 かーーーーっこいいーーーーーーーーーー。
 PS2のゲーム『みんなのゴルフ4』の長い髪のキャディの女性の声で
 「ステキよっ」といいたくなるような長歌ですなあ。
 私はここまで読んで、三月書房に詩集買いにいきたくなったのです。
 私だったら(私とくらべるのもおこがましいですが)
 これくらいのもの書いて、こころのこもった誉め言葉を
 ひとつでももらわなかったらへこみますねえ。
 もちろんちょっと後半福島泰樹がはいってますけど、
 それにしたってかっこいい。
 あと、
 9/11についての歌がこの歌集の後半なんですが、
 これは短歌形式が「公に向かってものを言う」のに適してる、
 というところをそう越えてないように私には思えました。
 だから駄目とかそういうのではないですけど、
 「往還」というんですか、自己の生活と遠方の事象のそういう
 ゆききをえがくこと以上になっていかないように見えます。
 ラストは、あ、これは買っていたわ、という
 『旅のあとさき、詩歌のあれこれ』からの歌編。
 ウィーン・ミュンヘンって歌いにくそうですねなんか。
 日本に帰還してからの歌の方が落ち着いているような。


◇ということで!
 一応読了「岡井全歌集」。
 まあ読んで何がどうなるというものでもないですけど、
 とりあえず読んじゃえば、読んでおいたことにはなりますな。


◇帰りの近鉄京都線ではエンタク5号の宮沢章夫鹿島田真希
 短編も読了。
 うーん。
 私はこういうのなら桜玉吉読んでたらそれでいいような
 気がするけどなあ。
 とりあえず12月になりました。
 人生に乾杯を。