mixi日記再掲載 短歌 「秋雨の中で」

◇次に何を書こうかを考えてるうちに一日が終わってしまいました・・・。


◇ということでmixiから短歌をのせておきます。
 ツイッターには更新とか書きません。




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2010年11月23日02:24



◇ 秋雨の中で ◇

      正岡豊



(なにもないときみはいうけどこのぼくをいやすちからがきみにあるのだ)



         ☆




秋雨の中でメールを打つ指に天がたらしてくる辛子色


そのことがわからなかったぼくにさえ霧のピアノは弾くロッシーニ


きみの住む耳の都を遠ざかる列車の通りすがりの汽笛


         ☆

 列車の中で打つメールは
 それはひとつの警笛だ
 人生が踏切にかかるときの
 遠い雷鳴が呼び覚ます記憶だ
 現在は過去を変えないが
 塗り替えることはできるし
 事実きみもわたしも
 そうしてきたではないか
 今夜だって私が酒場でいった酒の名を
 シルバーの首飾りをつけた女性は
 あざやかに復唱してみせた
 世界はそんな風に少しづつ変わる
 夕暮れが夜になるのは一瞬だが
 世界が音楽になるのは遠い未来だし
 子供たちがラムレーズンになるのは
 航法が激変する先の世のことだ
 ねえ
 ぼくはそこからきて
 いまきみに
 「好きだよ」という
 言葉を言おうとしてるんだ
 不安やおののきは
 その日まで消えないが
 消えなくても消えても
 洗濯機は買いにいこう
 ラジオドラマに二人でなろう
 ぼくらのはざまの十分の一世紀は
 たとえればアメリカンズカップの双胴船みたいなものだ
 海に浮かんでは消えていく
 それぞれの国の非望のようなものだ
 むらさきの夢は疲弊しきった船体とともに
 粉々に打ち砕かれたとしても
 空はみどりに
 十字軍は遊星に
 あざやかなシロホンの音色とともに
 あのカイゼルスゥエルト学園の校舎を
 打ち立てることだろう
 今夜この惑星に降るすべての雨はきみのものだと
 シロナガスクジラは海の中で歌う
 ぼくはそれに唱和して
 きみに向け歌を歌う
 きみの背中を抱きしめた指が
 夜の中で樅の木になる

        ☆


75センチ この世のものとも思えない仕草であなたがあやまった距離


誰にでもそれはあるかも知れないが星の匂いのレールモントフ


本当だ本当だ本当なのだクチナシなのだ夕顔なのだ


ねえ、笑おう、詩学大全210頁で巻いたタバコをくわえ


ミツバチはささやいたりはしないから鎖骨の海で泳がす人魚


「愛だ」「嘘」「愛だってば」「嘘だって」「ほら」「え」「ほら」「あ」月の光が

              ☆


きみがまた夢をみているうちに書く歌の香りのキリマンジャロ


                          秋雨の中で 了